3.9 講義や授業に際して注意すべき点 読者の中には、将来大学や小中高校で講義や授業をする人が少なくないと思われるので、さらにいくつか注意点を挙げておく。 A:クラスには必ず色盲の児童・生徒・学生がいる 先天赤緑色盲は、男性 20人につき 1人は必ず存在する。男女半々の 40人学級ならば、各クラスに 1人は色盲の児童・生徒がいるという勘定になる。大学になれば講議に出席する学生の数はさらに多い。したがって本来は、すべてのクラスで、色盲の人にもわかる色覚バリアフリーな授業をすることが必要なのであるが、これがこれまですべての教師に徹底されてきたとは、残念ながら言いにくい。 従来は学校健診において、一斉に色覚検査が行われてきた。教師はどの児童・生徒が色盲であるかを検査によって把握することで、そのような生徒がいるクラスでは色覚バリアフリーを心がけるという建前になっていた*40。だが実際は、検査によっ
3.7 学会でのスライドや PowerPoint、ポスター、さらにホームページのデザイン A:文字色と背景色の選定 学会のスライドやポスター、また研究室のホームページなどの作成においても、注意すべき点は論文の図版と基本的には同じである。1つだけ大きく違うのは、論文の図版が基本的には必ず白バックなのに対し、学会発表やホームページでは黒バックや青バックなど、背景色のうえに文字や図形を載せることが多い点である。このような場合、文字や図形の色が背景色と区別しにくい組み合わせになっていると、書いてあるもの自体が容易に視認できなくなる。 図形や文字の色と背景色を選ぶ際には、色相だけを変えるのではなく、明度を大きく違えるとよい。明るいバックに暗い文字か、暗いバックに明るい文字にする。明度の似通った赤と緑などを同時に使用すると区別がつかない。長波長の光を認識できない第1色盲の人は、暗い背景色における「濃い
3.6 見分けやすい色の選択 以上のように、誰にでもわかりやすい図版を作るには色だけでなく形などでも情報を伝える冗長性を加えることが大切である。しかし色というのは色盲でない人だけでなく色盲の人にとっても、対象を瞬時のうちに見分けるのに非常に有効なキーである。色盲の人が見分けにくいのは無数にある色の中の一部だけなのだから、見分けやすい色を意識して選びさえすれば、色の持つ特性を利用した効率のよいプレゼンテーションを行える。そこで本節では代表的な色について、色盲の人がどのような点に困難を感じるかを説明し、それを反映させた、すべての人になるべく見やすい色遣いを提案してみたい。 A:色の原理の復習 図16. 色の原理の復習 A:コンピューターでは光の3 原色を用いて色相を6 等分し,360 度の角度で表わす.B:波長700nm の赤,435.8nm の青,546.1nm の緑の光の配合率ですべての色
3.4 蛍光染色画像や DNA アレイの画像などデジタル情報の表示 つい数年前までは、多色の染色標本を撮影するにはカラーフィルムを用いるしかなく、自分でカラー現像する設備を持っているのでないかぎり、画像の色を変えるなどということはできない相談であった。しかし最近は急速に画像処理のデジタル化が進み、共焦点レーザー顕微鏡や CCD カメラで標本を撮影し、手元のコンピューターで自在に色を操れるようになった。このことは、標本の元来の色にかかわらず、工夫次第で見やすい色遣いを選べるようになったと言うことである。 A: 1チャンネルの蛍光画像は白黒のグレースケールで 図5. 単染色のカラー表示 1チャンネルの単色(モノクローム)画像を赤(R),緑(G),青(B)で印刷した状態のシミュレーション.第1 色盲では赤い画像はほとんど見えない.写真提供:白木岐奈,林茂生. 1種類の蛍光色素でラベルした標本には
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く