昨日あれだけ書いたのに、実は最も心惹かれた人物に触れていなかった。ユニコーニアの近くで、コミュニティには属さず一人で自給自足に近い暮らしをしているトーマスという人だ。 ある日、アユミはキノコとその友達であるオリヴィアを連れてユニコーニアの近くを散歩していて、庭なのか畑なのか判然としない雑然とした場所に出合う。男が一人働いており、アユミを認めると、手伝ってくれないかと声をかけてきた。こうして知り合ったのがトーマスである。 ここは畑なの?と聞くアユミにトーマスは言う。 「きみはこの混乱が畑かと疑ったね」 「畑というのは広くて、平らで、同じ種類の作物が秩序正しくどこまでも植えられたところだと思っている」 「ぼくはまず自分が食べる分だけ作ろうと思っている。いろいろなものを少しずつ。それも作物どうしが助け合うように工夫して。工場で作る肥料を使わず、機械を使わず、なるべくお金と無縁に、ここだけで食料を