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ブックマーク / lleedd.com (6)

  • 山中俊治の「デザインの骨格」 » あらためてSuicaの話でもしようか その2

    前回に続いて、SUICA改札機の裏話的開発ストーリーです。 実験は田町の臨時改札口で行うことになりました。二日間の実験でしたが、準備には2ヶ月以上を費やしました。実験なんだから、うまくいかなければやり直せば良いと思うかもしれませんが、実際には、ある程度以上の規模の実験はコストも手間もかかるので、ワンチャンスになることも少なくありません。そう思って、周到に準備することは重要です。 被験者となってくれる人たちに、何時間もつき合わせることはできないので、ひとりづつ約束をとりつけ時間と人数を調整する必要もあるし、記録装置のセッティング、分単位のタイムテーブル、人員の配置とその人たちに配布するマニュアル、その場で実験内容を変更できる実験機の設計と準備など、意外に複雑で大きなイベントになります。 実験では驚くような光景がたくさん見られました。今では考えられないことですが、カードを縦に当てる人、アンテナ

  • 山中俊治の「デザインの骨格」 » 速そうじゃなかった、サファリ

    ドイツLAMY社のサファリSafariという万年筆に初めて出会ったのは、二十歳の頃でした。「少しも速そうじゃないのに、かっこいい」と驚いたのを憶えています。この時の「速そうじゃない」というおかしな感想については、少し説明を要するかもしれません。 小学生の頃、私はいつもシャープペンやボールペンを乗り物に見立てて遊んでいました。お気に入りのボールペンは潜水艇だったり宇宙船だったり。だから文房具を選ぶ基準もスピード感でした。筆記具らしさも使い勝手も関係なく、速そうなペンがかっこいいペンだったのです。 大学生になってまで「潜水艇」だったわけではないのですが、子供の頃からのプリミティブなかっこよさ観からは抜け出してはいなかったと思います。だから都内の大型文具店で出会ったサファリの、「速そう」ではない魅力に衝撃を憶えたのでしょう。 不思議な説得力のある未知のかっこよさでした。貧乏学生だった私は、何度か

  • 山中俊治の「デザインの骨格」 » ジャンボに込められた美意識

    田川欣哉君が、まだ私のスタッフだった頃に、20世紀最高のデザインは何ですかと私に問いかけたことがあります。ぱっとついて出たのは「ボーイング747」でした。昨年、「クラシック・ジャンボ」と呼ばれるオリジナルシリーズ最後の747の現役引退が話題になりましたが、その時の会話で私がイメージしたのは、この初期型のジャンボでした。 私は「航空機を作る」というを制作したときに、ボーイング777の開発プロセスを半年かけて取材しました。777は、”Working Together”というかけ声のもとに、全世界の航空会社や部品メーカーを巻き込んで、徹底した合議制で作られた飛行機です。ボーイング社は、広範なニーズ調査から出発し、運用の現場から要望と問題点を吸い上げ、製造の現場からも改善提案を募ることによって、市場にきめ細かくフィットし、高品質、低運用コストの航空機を作り上げました。 どこかで聞いたようなものづ

  • 山中俊治の「デザインの骨格」 » スティーブ・ジョブスの台形嫌い

    手もとにあるプラスチックの製品を見て下さい。真四角な箱だと思っていたものが、よく見るとほんの少しだけ台形になっていませんか。二つの箱を合わせて作られた製品の、真ん中のつながりをよく見ると、わずかに「くの字」に膨らんでいませんか。まっすぐな円筒だと思っていたプラスチックのキャップ、よく見ると少し、口の側が大きくなっていませんか。 プラスチックの製品は、熱く溶けたプラスチックを型に流し込んで、冷えて固まったところで取り出して作ります。そのために多くの場合、どちらかの方向に向かって台形に広がっています。まっすぐなものは型から抜けないからです。型抜きポンで作る板チョコが必ず台形になっているのと同じです。真四角の高級生チョコは違いますよ。ひとつ一つ切って作りますから。 appleの創始者スティーブ・ジョブスはこの台形が許せませんでした。Mac II以前のMacはみんなちゃんと直方体になっています。プ

  • 山中俊治の「デザインの骨格」 » 脳内メジャー

    ものづくりの現場に関わると、計量感覚がかなり重要になってきます。 先日、ある学生に研究中の部品の既存製品はどのぐらいの厚さだったかと聞いたら「薄いものでした」という答え。「いやだからどのくらい?」と聞き直したら「えーと、とても薄かったです」。苦笑するしかありませんでした。 ものづくりの現場にいると、ある段階から「薄くしたい」では許されず、寸法を何ミリにしたいという明快な意思表示が必要になります。その経験を積むと、自然に携帯電話のキーをみて「(突出量が)0.2ミリないかも」とか、車のバンパー見て「8000R(曲率半径が8mという意味です)ぐらいか」とか習慣的に考えるようになってきます。 以前に、公共建築の家具をデザインして、お役所の人が試作品を確認する「検査会」に参加したときの事です。自分もその試作品を見るのが初めてだったので、ついいつもの調子で、椅子の肘掛けのエッジが、私の指示よりシャープ

  • 山中俊治の「デザインの骨格」 » 幻のMac OS

    もう15年ほど前になります。私たちはアップルの拠、クパチーノでインタフェース開発グループの人たちを前にプレゼンテーションを行っていました。その時に提案したのがこのDrawingBoardというMac OSのインターフェースデザインです。 提案メンバーは私と、猪股裕一さん、戸田ツトムさん、宮崎光弘さん、須永剛司さんの5人。プレゼンは大成功で、直ちに開発がスタート。 ご覧のように、あらゆるパーツが手書き風のOSインターフェースを提案したので、実装はとても手間のかかる作業でした。すべてのパーツをデザインするのにほぼ丸1年。一応私がプロジェクトのディレクターを務め、コンセプト段階では猪股さんや須永さんに協力いただき、ディティールに戸田さんと宮崎さんの手が入っています。 アップル・コンピュータ社との仕事はとても楽しいものでした。彼らのインターフェースデザインに対する情熱と誇りや、しっかりとした設

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