川崎医科大学卒業後、大阪大学論文博士課程修了。日本外科学会指導医。日本消化器外科学会専門医。現在は大幸薬品社長。著書に『カリスマ外科医入門』『肝癌の熱凝固療法』がある。 外科医のつぶやき 現在は製薬会社役員である外科医師による医療エッセイ。患者の知らない医師の世界。病院の内側が覗ける、ここだけの話が満載。 バックナンバー一覧 先日、私は今までにない特別の思いを持って、歯医者さんへ向かった。インプラントを埋める手術であった。「はい、柴田さん。お口をゆすいで、では今から麻酔のお注射をしますから、ちくっとしますね」と歯科医の先生。 私は努めて肩の力を抜く。だが、気がつけば右手の親指に人差し指のつめをたて、自らの指の痛みを作りながら、注射を待っていた。指の痛みに勝る痛みは感じない。かすかに歯肉に刺さる痛みを感じ、麻酔薬が注入される電動音、それからコツコツ下額骨にあたる針先を感じる感覚だけであった。