筆者には日本の携帯電話産業が,パソコン産業の歴史を繰り返しているように見える。 1980年代後半の日本のパソコン市場の王者はNECのPC-9801だった。ところが,1990年に投入された日本アイ・ビー・エム製のOS,「DOS/V」が登場したことで流れが変わった。DOS/Vは日本語処理用の独自プログラムをMS-DOSに組み込んだOS。既に世界標準プラットフォームとなっていたPC AT互換機にこれを載せれば,日本語環境を持ったパソコンを作り出すことができた。それまではパソコンを日本語化する場合,専用の拡張ROMボードなどが必要で,そのままPC AT互換機を日本に持ち込むことができなかった。これが解決されたことで,一気に日本にPC AT互換機が流れ込むこととなった。 PC ATの仕様はオープンであったためメーカーの競争がし烈。そのパーツは世界市場に向けて大量生産されるため,完成品は日本市場用に作