その日の仕事を終えた宇木草鞍史は、いつものように定宿であるネットカフェに入店した。宇木草にとっては帰宅、と言ったほうがしっくりくるが。 すでに日は暮れていたが、店の中は昼でも夜でも同じ時間が流れている。ドリンクバーでコーラを用意し、お湯を入れたカップラーメンとともに窮屈なネットカフェのプライベートスペースに入る。シートに座るとテレビをつけ、ぼんやりと見ながらラーメンができるのを待つ。ラーメンが出来上がると、それをすすりながらパソコンで今後の仕事を探す。仕事が確定すれば、またテレビをぼんやりと見て時間をつぶす。 これが彼の日常であった。 今後の仕事と言うのは、これから数日間の日雇いの仕事だ。地方都市出身の彼は進学を期に上京。大学を卒業した時は未曾有の不況で、就職に失敗した。正社員採用を目指しつつ派遣で食いつないでいたが、安定した仕事になかなかありつけないままおよそ十年が過ぎていた。 景気が回