英語のサラリー(salary)はラテン語のサラーリウム(salarium)に由来する。そしてこの salarium の語源は sal すなわち「塩」である。このことに疑いの余地はまったくない。しかしここから一挙に「古代ローマでは兵士に塩が給与として支給された」と話がとぶと、これはちょっと違う。なるほどラテン語は古代ローマの言語であるが、この文章からはあたかも例えばユリウス・カエサル(シーザー)が、自分の配下の兵士たちに塩を配っているかのような誤解を生じさせてしまう。そんなことは起こりはしなかった。 salarium は軍務ないし役人の、それもかなりの職責のある者に支給された。ただしそれは現金である。一方ことばには「塩」がついている(正確にいえば salarium は形容詞「塩の」の中性形が名詞になっている)。これをどう考えるか。 実はローマ人にとってももはや真相は分からなくなっていたようで