AERA 2017年7月31日号より この記事の写真をすべて見る わずか数年で物価が何十倍にも高騰する社会。南米の国ベネズエラで、人々は今、「ハイパーインフレーション」に苦しんでいる。ある家族の日常を追った。 世界一の原油埋蔵量が確認されているベネズエラは、天然ガスや鉄鉱石などにも恵まれた資源大国だ。ギアナ高地のエンゼルフォールに代表される美しい自然でも知られる。そこで暮らす人々が今、すさまじい物価上昇が続く中で、毎日の生活を維持するのに必死になっている。 「独善的な政治による混乱と、ハイパーインフレーションによる経済危機が、国民を追い詰めている。お金がない。食べ物がない。治安も極度に悪い。人々の道徳心すらも消えていく。信じてきたあらゆる価値観が失われていく」 そう嘆くのは、ガブリエルさん(48)。販売員として働くショッピングセンターがある首都カラカスから約20キロ離れた町で、妻と15歳の