「福祉国家ドイツ」の闇 ガブレエレ・Dは1960年代のはじめ、次女として生まれたが、母親の手ですぐに施設に預けられた。母親は、長女と三女を里子に、長男を養子に出し、四女は手元で育てた。つまり、5人の子供のうちの4人はいずこかの家庭で育ったが、ガブリエレだけが家庭はおろか、母親もろくに知らなかった。父親はしばしば刑務所に入っていた。 ところが、それから50年以上経った2016年、突然、ガブリエレの元に、母親の老人ホーム代の請求がきた。ドイツの法律は、子供に親の扶養を義務付けている。 自立できず、在宅でのヘルパーによる介護も機能しなくなった高齢者は老人ホームに引き取られるが、ドイツのホームは、たとえ教会など非営利団体が経営しているものでも、料金が非常に高い。日本の「特養」のように、お金のない人にとって有難い、公的な役目を果たしている老人ホームもほとんどない。安かろう、悪かろうという施設はあるが