97歳、音楽批評への挑戦 吉田秀和さん「永遠の故郷」完結2011年1月17日「音楽はひとりの人の人生、人類、すべてにつながる。だから決して色あせない」と語る吉田秀和さん=池上直哉氏撮影4部作の『永遠の故郷』著者:吉田 秀和 出版社:集英社 価格:¥ 1,785 音楽評論家、吉田秀和さんの自伝的エッセー『永遠の故郷』(集英社)全4巻が完結した。ベートーベンやシューベルトら大芸術家が紡いだ愛すべき歌たちに、自らの戦争体験や恋の思い出などを重ね、大胆かつ柔軟な筆で描き下ろした。人生の集大成であると同時に、現代における「批評のかたち」を今なお模索する97歳の挑戦の証しでもある。 音楽を書くという行為に、自分という存在をもっと投影していい――。吉田さんはいま、そう感じるという。 「自分を消し、対象を客観的に書くのも大切だけど、好き嫌いを含め、『己』と音楽を大胆に結びつける評論がもっとあっていいんじ