JCERの「日本経済研究」では、ときに興味深い論文が公表されている。今月はそのうちの2本がとくに目を引いた。 まずはこちら。 景気後退と自殺、そのプロセス—都道府県別パネルデータによる考察 薄田 涼子 以下は概要である。 自殺者の多くが、生前に精神的ストレスや精神疾患を抱えている。既存の経済学的な自殺研究は、不況や失業と自殺リスクの相関を分析し、その間に精神衛生が徐々に乱れるプロセスがあることを暗示している。本稿は、精神衛生に関する都道府県別パネルデータを用いて、不況期に自殺率が上昇するだけでなく、精神的ストレスが増大すること、精神疾患への罹患リスクや精神科治療への需要が増大すること等を示している。精神科治療に対する認識を高め、精神科治療体制を強化することを視野に入れた自殺防止策の重要性を示唆している。 それだけなら堅気の衆には「うん、知ってた」でかたづけられてしまう話かもしれない。だが、