未知を愛するノンフィクション作家・高野秀行が見つけた新たな未知は、「リアル北斗の拳」と呼ばれるソマリアのなかにある謎の独立国家「ソマリランド」だった。 そこは崩壊国家の一角で独自に内戦を終結し、複数政党制による民主化へ移行した平和な国だという。本当なのだろうか? 情報はほとんどなく、確かめるには自分の目で見てみるしかない。高野秀行の渾身の辺境旅が始まった。 ほんとうの「カート宴会」に初めて参加したのはベルベラだった。私たちは一連の小旅行を終え、今度はソマリランド国内でも「辺境」として知られる「東」への旅に出ていた。 ソマリランドには舗装道路がいくつもない。東へ行く街道はたった一つだ。だから行きたくないのに毎回、ベルベラを通らねばならない。 しかも東行きのときは、ハルゲイサを出て一時間もしないうちに車のショックアブソーバーが壊れた。修理および部品交換のため、酷暑のベルベラで午後を過ごすは