至近距離で小野二郎の所作を見た。 いわゆる流麗なタイプでも、無骨なタイプでもない。 とりわけ序盤に顕著だったが、米粒が手のいたるところにくっついていたりしたし、作業そのものがことさら美しいわけでもない。 念をこめるようなパフォーマンス性は皆無。 また、言うまでもないが、よくいるスピリチュアル系の握り手ではないから、自身の精神をことさら際立たせるーーこれみよがしなーー態度とも無縁である。 ただ、手早さよりは、やや慎重と言ってもよい動きが印象に残る。 重いわけではないが、まったく軽快ではない。 整形に時間をかけているのではなく、最終的にネタとすめしに一体化をはかっているように見えた。 もうすぐ88歳だという。 年齢がどの程度影響しているのかはわからないが、手数を意識的にひとつふたつ増やしているのではないかと思った。 前述した通り、それは「見せるための」ポーズではなく、そうしたほうが仕上がりがよ
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