最近は見かけることも少なくなったが、かつては神経症とかノイローゼとかいった「こころ」の病名をよく見かけた。 これらはフロイト以来の精神分析にかかわる「こころ」の病名で、おおざっぱにいえば「こころ」の内面の葛藤やこじれに関するものだった。1990年代に目立った境界性パーソナリティや自己愛パーソナリティなども、「こころ」の成熟を問題としていたから、「こころ」の病名の一部とクローズアップされたとみていい。 しかし現在は違う。 精神医療の診断の多くは、アメリカ精神医学会の診断基準(DSM)に基づいて行われるようになり、その診断基準には、神経症やノイローゼといった病名は存在しない。現代の精神医療は、患者さんの「こころ」に関して病名をつけるのでなく、第三者にも観察可能な振る舞いを診断基準としている。「こころ」に深入りしなくなったからといって、精神医療が衰退したわけではない。むしろ逆で、「こころ」にこだ
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