→紀伊國屋書店で購入 「写真家とはこういう者である」 ロベール・ドアノーと聞いて、その人、だれ?と首を傾げる人でも彼の写真は見ているはずである。恵比寿の東京都写真美術館に行くと入口の通路のところで、壁にプリントされたキスをする恋人をとらえた巨大な写真が目に飛び込んでくる。この写真の撮影者がロベール・ドアノーである。 マグナムの写真家として世界を股にかけたアンリ・カルチェ=ブレッソンなどと比較するとつつましい存在だったドアノーは、かつて『ライフ』の依頼で撮ったこの写真が1983年に再利用されたことで一躍有名になった。写真が「パリ=恋人たちの街」というイメージを再生産するのに大きく貢献したことはまちがいなく、当時はそれをさらに盛り上げるためにパリの観光局は若いカップルに金を払って街のあちこちでキスさせている、というまことしやかな噂さえ流れたものだった。 1912年生まれのドアノーはそのときすで