「豆腐の話ができるのが嬉しくて仕方ない」 「高い大豆で豆腐つくって、誰が買うのよ」と笑われたのは18年前のことだった。「地元・十勝の豆を活用したい。加工業は、原料の近くで操業すべきだ」との思いで始めた豆腐づくりだったが、設備を整えてから約半年間は機械が動くことがなかったという。「器用じゃないし、能力もない。だから、何やるにも時間がかかり過ぎるんですよ」と、中田食品(帯広市)の貴戸武司社長は自嘲気味に言う。親の代から続くそのメーカーは、もともとはこんにゃく製造販売の老舗として知られていた。 豆腐製造が事業全体の7割を占めるに到った今の状況を、「まったく想像できなかった」と言う。2006年7月に陽の目を見た燻製豆腐「とうふくん」がたちまち物産品のベストセラーになったのも、予想を超える展開だった。道外向けに流通する十勝の大豆を少量で卸して貰うことは難しく、一時は豆腐づくりそのものを諦めていたほ