東京下町にある町工場が減り続けている――。かつて大田区や墨田区などの下町は、工場の集積地として栄えていたが、景気の悪化や、大手メーカーの生産拠点が海外へ移ったこともあり、年々縮小の一途をたどっている。墨田区では45年前に1万社ほどあった町工場が現在、約3000社にまで減少した。今もなお、減少が続いている。 しかし、そうした苦しい時代の中でも取引先を15年で120倍に、売り上げを20倍に増やし、成長し続けている町工場が墨田区にある。「精密板金加工」などを手掛ける浜野製作所だ。多くの町工場が姿を消していく中、一体なぜ同社は成長することができたのか。社長の浜野慶一氏に話を聞いた。 量産型から一品物・試作品の仕事へ 新しいことにチャレンジしなければ生き残ることはできなかった――。浜野氏はそう語り、当時を振り返る。 浜野製作所は1968年に浜野氏の父親、浜野嘉彦氏が創業。最初は部品を量産するために使