著作権というイデオロギーを読む 『サイバースペースの著作権』名和小太郎著(中公新書/一九九六年/680円) 著作権の問題ほど、現代のメディア文化の構造とそれに対する近代的な制度や観念との齟齬が明瞭に見てとれる領域は他にない。にもかかわらず、一般の著作権に対する認識と言えば、文化的なテクストの使用に対する窮屈な規制であるか、もしくはナイーブに信仰される「表現者」とやらの「権利」といった認知が関の山であろう。そこでは問題は、ある実践が法に触れるか/触れないかという法律的な問題に還元されており、われわれの置かれた社会での、文化的なテクストの取り扱い方に関するキャノン(基準)を表象した一つのイデオロギー体系として著作権が受け取られることは稀である。しかし現行の著作権システムは、その起こりが西欧における民主主義=人格権思想の成立と深く関わる思想史上の出来事であり、近代的な芸術思潮---