YKK株式会社の創業者吉田忠雄(1908~1993)。「他人の利益を図らずして自らの繁栄なし」とする「善の巡環」を経営理念とし、わずか3人で始めた会社を世界のYKKに育て上げた。 ズボンやスカートなどの衣料品はもちろん、鞄や靴、漁網や防虫ネットといった産業用まで、あらゆる分野で使われているファスナー。ファスナー業界にあって、国内市場の実に95%、世界でも45%のシェアを誇るのがYKKだ。世界2位、3位のシェアはわずか7~8%ずつなので、今やほとんどのファスナーがYKKといっても過言ではないが、この世界ナンバー1の地位はどのように築かれたのだろうか。 YKKの創業者吉田忠雄は、20歳の時、貿易商になる夢を胸に富山県魚津から上京。中国陶器やファスナーの輸出入を手がける会社に勤めるものの、会社は4年足らずで倒産。吉田は在庫品のファスナーを引き取り、1934(昭和9)年にサンエス商会(吉田工業の前