ドイツの戦後処理は、本来の意味でのリアルポリティクスに基づいている 武井彩佳『〈和解〉のリアルポリティクス――ドイツ人とユダヤ人』 2017.01.27 「リアルポリティクス」とは直訳すれば「現実政治」であるが、弱肉強食の権力政治(パワーポリティクス)とほとんど同義で用いられることが多い。しかしリアルポリティクスの源流は19世紀ドイツの自由主義者ロッハウが1853年に著した『レアルポリティークの諸原則』で、何が望ましいかということより、何が達成可能かを問い、そのための政策を求めるという意味での現実主義であった。そこにパワーポリティクスのニュアンスはない。 ドイツの戦後処理は、本書の洞察によれば、本来の意味でのリアルポリティクスに基づいている。ナチ政権の崩壊後、ドイツの人々は戦争の惨禍から立ち直るのに精いっぱいで、加害者意識は希薄、むしろ被害者意識が強かったが、ドイツ連邦共和国として再生した