彼はとてもキリスト教の信者には見えない人でした。そもそも、普段の話にキリストも神もまるで出てこないのです。 地方に在住する普通の勤め人で、近所の教会に若いころ(具体的にいつなのかは知りません)から通っているようですが、特に教会の「布教」「勧誘」などの活動に熱心にかかわっているわけでもありません。「師」と仰ぐ人物もいないらしく、彼の口から特定の聖職者の名前が繰り返し出たこともありません。 驚くべきはその読書量で、ナイーブな「キリスト教信者」からすれば「冒涜的」「背教的」、そうでなければ「無神論的」と思われるような書物まで読んでいて、話していると博覧強記ぶりに圧倒されることがあります。 あるとき、私は尋ねてみました。 「正直なところ、君は神を信じているのか?」 「当たり前だろ」 「では、神は実在すると?」 「そんなことはどうでもいい」 「えっ?」 「私が信じているのは、神の実在ではない。神の実
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