ショーペンハウエル『読書について』(1851)を再読したので、それについてふれてみたい(私の中では「ショーペンハウアー」の方が自然なのだが、引用文献の表記に従うことにする)。読書論の古典として読み継がれているものだが、基本的には現代でも通用するアドバイスを含んでいるものである。 ちなみに、日本語訳ではそのまま『読書について』というタイトルで本が出ているが、実際にはこれは主著である『意志と表象としての世界』の注釈書『余録と補遺』にあるアフォリズム形式の文章である(日本語訳するとたった20ページである)。ただし、便宜上ここでは本として扱うことにする。 最初から余談になるが、『読書について』と言えば、よく引用されるのは次の部分である。 読書は、他人にものを考えてもらうことである。(岩波文庫、斎藤忍随訳。以下同) この一文は、しばしば「名言」として扱われていたりする(同じ言葉は『思索』の中にもある