新しい父、新しい弟、そして幸せそうな母……。 母の再婚によってできた新しい家族に馴染めずにいた多生は、そこから逃げるためにパブリックスクール〈ウィンロウスクール〉へ入学する。 しかし、多生は学校でも周囲との違いを感じ、自身の素直になれない性格もあって、どこにも馴染めない疎外感を抱く。 「結局、逃げてきた場所でも ストレイ・シープなんだ」 寮の部屋から見える荒れた空き地に自分を重ねた多生は、その片隅に園芸店で手に入れたコルチカムの球根をひっそりと植える。 学校の片隅。誰にも知られずに育つ花。 しかし、それを見つけた人物が一人だけいた。 「……前にも会ったね、花の前で」 その人の鮮やかなプラチナムブルーの目を見たとき、多生はあたり一面にネモフィラの花が咲いたように思えた。