本書は日本の鉄道史を「政治」という切り口から解説する良書である。私自身、鉄ちゃんではなく、どちらかというと飛行機派だったので、これまで鉄道史は全く興味なかったし知らなかったが、本書を読んで少しは詳しくなった気がする。しかも本書は歴史を述べて終わりではなく、最近の新幹線輸出ビジネスや東日本大震災で壊滅的な被害を受けた三陸鉄道についてもカバーしているので更に面白い。 鉄道史の紹介では「へー」という事例がたくさん登場する。例えば、鉄道を日本に導入させた大隈重信や伊藤博文などの明治政府は、鉄道建設による経済効果や軍事的有用性などは当初あまり評価していなかったようである。それよりも文明の利器である鉄道を建設することにより一般民衆に強烈なインパクトを与え、明治新政府へ人心が収斂される効果を狙っていたようだ。明治政府による鉄道建設は壮大な計画のもと推進されたかと思いきや、最初はただの人気取りの手段だった