「最前線」のフィクションズ。めまぐるしいまでの“人格”の交代劇をかぎりなくポップかつスピード感あふれる文体で描ききった、血みどろにして爽やかなラブストーリーが、たった今はじまる!記念すべき第1回星海社FICTIONS新人賞受賞作。ここが青春の最前線。 人が天気に未来の暗示を見るのは何故(なぜ)だろう。 抜けるような晴天だと今日は何か良いことが起きる気がする。強風に豪雨だと何か悪いことが起きる気がする。そりゃここ日本だもん。晴れの日も雨の日もある。じゃあなんだ? 梅雨(つゆ)の時季は嫌なことが起こる確率が高いのか? んなわけない。実際この世には良いことも悪いこともなくて、それを良いとか悪いとか個人が勝手に判断しているだけだ。だから天気なんかに未来の暗示を見る奴は、光度や湿度に自分の気分を揺るがされている無意識に対し無自覚な人間だ。天気に未来の暗示を見るなんて全然意味がない。 土砂降(どしゃぶ