1980年代後半、バブル景気が頂点に達していたころ、テレビや週刊誌などでは、多くの識者たちが「今世紀中に株が下落することはない!」などと語っていたものでした。当時、学生だった私も「日本はしばらく景気が良さそうだな」と、信じて疑いませんでした。 しかし、いまの私たちは、その後何が起きたかを知っていて、当時を冷静にふり返ることもできます。『投資賢者の心理学 行動経済学が明かす「あなたが勝てないワケ」』(日本経済新聞出版)の著者で、経済コラムニストの大江英樹さんは、当時の日本人の多くが、行動経済学で言うところの「現状維持バイアス」にかかってしまっていたためだと分析しています。 行動経済学は、「合理的な経済人を前提とする従来の経済学とは異なり、心理学や社会学の要素を取り入れ、人間の心理・感情に焦点を当てた分析を行う経済学」と定義できます。人間はしばしば不合理な選択や行動をとるもので、なぜそうしたこ