前回のコラムでは日本が置かれている閉塞状況を「官製不況」と位置づけ、各省庁の打ち出す政策のまずさを批判した。今の日本が直面している不況は、サブプライムローン問題によるものでは断じてない。政治・行政の無策によるものである――と。とりわけ厳しく批判したのは経産省である。「鉄は命を懸けても守る」とプレジデント誌でのたまわった事務次官を頂点に持つ同省がつくった買収防衛指針が世界の常識にどれほど反するものであるか。それが日本の経済に与えた打撃はどれほどのものか。 なるほど経産省の買収防衛指針は、外資系ファンドからの買収攻勢にさらされたブルドックソースを裁判所と二人三脚で救うことはできた。それは誠にご同慶の至りだが、1社が生き延びた陰には累々たる中小・零細企業の骸(むくろ)が転がっているのだ。「一将功成りて万骨枯る」という言葉を地で行くような話である。この未曽有の閉塞感の中、そんな政策はいかな理屈を