第5回(1995年) Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞。 還暦間近の夫婦に、92歳の父と87歳の母を介護する日がやってきた。 母の介護は息子夫婦の苛立ちを募らせ、夫は妻に離婚を申し出るが、それは夫婦間の溝を深めるだけだった。 やがて母は痴呆を発症し、父に対して殺意に近い攻撃性を見せつつも、絶食により自ら命を絶つ。そして、夫婦には父の介護が残された……。 老親介護の実態を抉り出した、壮絶ながらも静謐な佐江文学の結実点。 アマゾンより引用 感想 「老人介護」などというテーマは「ありきたり」な事であり、どこのご家庭にもある問題なので、ある意味において「まったく珍しくも、なんともない物語」ではある。 しかし「ありがちな感じ」は作者の筆の巧みさでもって見事にカバーされていた。なによりも私の心を直撃したのは主人公の男性が、自分の親にたいして「死んでくれ」と心の底から願う場面だ。 親に対して「死んで