高馬力化の進展のなかで、プロペラは新たな問題に遭遇することになる。ウィリアム・フルードが発見して名づけたキャビテーション現象である。 キャビテーションとは、翼の表面に生じる空洞現象のことで、本来水で被われているべき翼の表面に気泡ができることで、プロペラの推力が低下するなどの悪影響を引き起こす。 ●図13は典型的なキャビテーション現象の写真で、推進力の源である負圧が一定以上に強くなると、このように常温でも水が沸騰してしまうのである。一般に、高馬力、高速であるほどキャビテーションが起こりやすくなる。 1894年、蒸気タービンを発明したパーソンズは周到な実験を経て、世界初の蒸気タービンを作り上げ、タービニア号に搭載した。当時としては画期的な高性能のエンジンで、プロペラを毎分1800回転させることで30ノットの高速を得る計画だった。しかし結果は満足できるものではなく、最高速度は20ノットにも達しな