■岩手県矢巾町で「いじめゼロ」が続いていた岩手県矢巾町で、中学2年の男子生徒が、いじめをうかがわせる内容をノートに記して自死した。その事案について、矢巾町内のすべての小中学校(小学校4校、中学校2校)で、いじめの件数が昨年度から毎月「ゼロ」であったことが明らかとなった。 現実には、男子生徒は1年生の頃からたびたび、いじめと思われる状況を訴えてきたという。それにもかかわらず、学校から矢巾町に報告されていたのは「ゼロ」件だったのである。 本記事では、この「いじめゼロ」の問題を、もう少し深く掘り下げて考えてみたい。 というのも、「いじめゼロ」というのは、単に現実からかけ離れていたという点で問題であるだけでない。じつは「いじめゼロ」というのは、それがひとたび目標として設定されると、いじめ防止の邪魔をしてしまう。「いじめゼロ」が、いじめを助長してしまうのである。 ■「いじめゼロ」という究極の数値目標