ギアチェンジのタイミング、加速、減速、さらにはワイパーのアクションまで、クルマのすべての動きが音楽とぴったり同期する。気持ちいいぐらいに息が合っていて、もはやスタイリッシュですらある。そんなふうに、まるで、クルマがミュージカルの主役みたいに「歌って、踊る」のが、新感覚のカー・アクション映画『ベイビー・ドライバー』だけれど、とはいえ、クルマが勝手に踊るはずもない。そこにはクルマを歌わせ、踊らせる人間がいるわけで、それがこの映画の主人公である〝ベイビー〞という「ゲッタウェイ・ドライバー」(逃走するクルマのドライバー)である。23歳のアンセル・エルゴートが演じた。 〝ベイビー〞は、映画のなかで銀行強盗のグループを乗せて逃亡を助けるスゴ腕ドライバーだ。そして〝ベイビー〞は、つねにイヤホンでアイポッドから流れる音楽を聴いている。音楽のビートに合わせてステアリングを切り、スロットルやブレーキ・ペダルを