GRAPEVINEの作品目録はここから始まる。ミニ・アルバムでのデビューというのは当時としては珍しい。それは主流だった8cmシングルでも12cmシングルでもない形でメジャーの世界に飛び込みたいというメンバーの意向だった。つまりそのキャリアのスタート地点からGRAPEVINEの作品にはある種の反抗的意図が込められている。だが、もしあなたがこのアルバムからそのような反抗を感じ取れなかったとしたら、それは完全に正しい。ここには天邪鬼に奇をてらってやろうとする音楽はひとつも収められていない。むしろあまりにも素直に歌われた歌だけがある。甘ったるいボーカルの背後には隠しきれないセンチメンタリズムがあり、ザラついたギターの背後には驚くほどウェットな感受性が見え隠れする。だけど、それが最高に心地いい。まだはっきりと形をとっていないGRAPEVINE的世界のプロトタイプ。この作品にはそんな若い感性が凝縮され