「跳びたい! 私にはやっぱりアクセル。だから跳びたいの! お願い、パワーをちょうだい!」 身長145センチの身体を、思い切り良くブンッと踏み切り、音を立てて空中へと投げ出す。右足を軸に、左足を「くの字」に巻きつけ、1回転半。バーンッと着氷すると、気持ちよさそうに振り返り、決めポーズをとった。 伊藤みどり、53歳。フィギュアスケート史に名を残すレジェンドは、今、再び氷上に立った。当然ながらトリプルアクセルを跳ぶわけではない。ダブルアクセルでもない。ただひたすら、大きなシングルアクセルを、転んでは立ち上がり、降りては無邪気な笑顔を見せる。50代を迎えた彼女を、今、動かすモチベーションとは――。 32歳まで跳び続け「トリプルアクセルは私の一番のやりがい」 誰もが、あの映像を一度は見たことがあるだろう。1992年アルベールビル五輪、えんじ色の衣装にポニーテールの伊藤が、空を切り裂くようなトリプルア
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