今回紹介する作品は、 『ナチスに仕掛けたチェスゲーム』です。 【あらすじ】 ロッテルダム港を出港しアメリカへと向かう豪華客船に乗り込んだヨーゼフ・バルトークは、船内で行われていたチェスの大会を目撃する。彼は世界王者と対局中の船のオーナーにアドバイスを与え、劣勢にあった局面を引き分けにまで持ち込ませる。バルトークに興味を持ったオーナーは「大会で何度優勝した?」と尋ねるが、彼は「駒に触ったのは初めてだ」と答えた。 バルトークはかつてウィーンで公証人として働いていたが、ヒトラー率いるドイツがオーストリアを併合したことにより、ナチスに連行されていた。ゲシュタポから貴族の預金番号を教えるよう迫られたバルトークだったが、彼は頑なに口を閉ざす。 一向に口を割らないバルトークはホテルの一室に監禁されてしまう。そこは、家具以外のものは何もなく、外部の情報や文化が一切遮断された空間だった。外界と断絶された部屋