狂言師の野村萬斎さん(45)は、現代劇や映画、テレビにも活躍の場を広げ、人気を集めています。「狂言を広め、未来につなげたい」。“異業種”への挑戦の背景には、そんな信念があったといいます。(村島有紀)創作初演の公立劇場 「この仕事に運命的なものを感じた」。平成14年に就任した東京都世田谷区立の劇場「世田谷パブリックシアター」の芸術監督のことだ。 その1年前に、創作狂言「まちがいの狂言」の初演を行った場所。縁もある。そして何よりも公立劇場であることに意味があった。「社会還元ができると思った。区や都、国という公共の存在と『生かし、生かされる』相互関係がない限り、伝統文化は簡単に死に絶えますから」 理由がある。室町時代から武士階級の庇護(ひご)を受け育まれてきた狂言。明治になってからは、その庇護を失い廃業の憂き目にあった狂言師も数多い。演目が誕生した時代と現代の価値観との差異から、上演内容が理解さ