国民の証明である戸籍がなくても、社会に迎えられる人はいる。 たとえば新しいパートナーの子を産んでも、婚姻関係を解消できない夫との関係から出生届を出さないなど、親の事情で無戸籍となる子がいる。各自治体はそれぞれの判断でこうした子に住民票を発行している。義務教育の就学機会も設け、児童手当や保育所入所、新生児健診などの行政サービスも提供している。 しかし親が子と社会との一切の接点を絶てば、第三者が子の存在をつかむのは容易ではない。厚生労働省は現在、住民票があるのに予防接種の未接種や学校に来ない18歳未満の所在不明児を全国調査しているが、法務省によると、住民票がない子は「存在を認識する端緒がない」という。 社会の闇は事件で照らし出される。1988年、東京都豊島区で2歳の子が死亡し、無戸籍の兄妹4人が親に置き去りにされていたことが発覚した。この事件を題材にした映画「誰も知らない」(2004年)は反響