放射性同位体ポロニウム210は,多くの人が考えているよりもずっと身近なところにまで広がっている。世界で年間に6兆本近いタバコが吸われているが,その1本1本が少量のポロニウム210を肺に送り込んでいるのだ。 植物のタバコには低濃度のポロニウム210が蓄積する。その大部分は肥料に含まれている天然の放射性元素から生じたものだ。喫煙者が吸入したポロニウムは肺の“ホットスポット”に定着し,がんを引き起こす原因となりうる。ポロニウムはタバコの煙に含まれる発がん物質として主要なものではないだろうが,それでも米国だけで年間に数千人がこのせいで死亡していると考えられる。 そしてポロニウムが他の発がん物質と異なるのは,これらの死が単純な対策によって避けられたはずだという点だ。タバコ産業はタバコにポロニウムが含まれていることを50年近く前から知っていた。私はタバコ産業の内部文書を調べ,メーカーがタバコの煙に含ま
![タバコに放射性物質](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/2f7b79f5d75a938672ac93d39944bd10b94086a6/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fwww.nikkei-science.com%2Fwp-content%2Fuploads%2F2011%2F03%2F201104_066.jpg)