2012年をどう生きるか。常に時代と切り結ぶ小説を世に問うてきた、直木賞作家・石田衣良さんに聞く。2回目のテーマは「震災と小説家」。(聞き手=ノンフィクションライター・神田憲行) ――3.11以降、震災をテーマにした小説がいくつか出ています。石田さん自身はどのようにお考えですか。 石田:今出ている震災をテーマにした小説はシリアスな純文学ですね。エンターテイメント小説にするには、まだしばらく時間がかかると思います。もし井上ひさしさんがご存命だったら、あの人東北出身だから、たぶん震災でコメディを書いたんじゃないかな。 僕は震災をテーマにしたアイデアは、SF、ラブストーリー、コメディの3本持っています。コメディは実際にある話を素材にするつもりなんです。 いまある地域でがれき処理で重機を運転する人たちがひとつの旅館を借り切って作業しているんですが、その旅館の一間にスロットル、もう一間にキャバクラが