藤井聡太は14歳で棋士となり、プロとして大人達と戦っている。加藤一二三、谷川浩司、羽生善治、渡辺明も中学生でプロとなり棋歴を積み上げてきた。ある意味、将棋史は天才少年達が作り上げてきたものと言って間違いはないだろう。 私が将棋の天才少年と聞いて思い出し、胸を熱くするのは「大橋宗銀」と「伊藤印達」という二人の少年である。今からおよそ300年前の江戸の世を生きた少年達だ。 橋本長道 1984年生まれの小説家、ライター、将棋講師、元奨励会員。神戸大学経済学部卒。著書に『サラの柔らかな香車』『サラは銀の涙を探しに』(いずれも集英社刊)。 連載:「15年後の感想戦」 少年たちの「五十七番勝負」 私が二人のことを知ったのは、高校生の時のことだった。地元の図書館で『日本将棋大系3 五代大橋宗桂・宗銀=印達』(加藤治郎/筑摩書房)を手に取った時のことである。 宗銀と印達は、それぞれ世襲の将棋家元である大橋