ウォール街を占拠していたデモ隊は、さすがに撤退し始めたようだが、欧州では財政危機による緊縮財政に反対して、ギリシャやイタリアでデモ隊と警官隊の衝突が続いている。ところが日本だけは、格差反対デモが盛り上がらない。 それはそうだろう。日本の所得格差を表すジニ係数は、0.28程度。最近やや上がっているが、トップのアメリカ(0.37)よりはるかに小さく、OECD(経済協力開発機構)諸国の平均程度である。 アメリカではここ30年、中位の労働者の実質賃金が下がる一方、経営者や金融部門に富が集中し、上位1%の富裕層が富の23%を独占する極端な格差が生じている。この点でウォール街を占拠するデモ隊の主張は正しいが、彼らは敵を間違えている。金融機関が利潤を上げるのは格差の原因ではなく、その結果にすぎないからだ。 成長する新興国が先進国の雇用を奪う 格差や貧困の直接の原因は長期化する世界不況だが、今回の不況の特