人生考える余裕がほしい 平成18年6月の京都地裁。母親殺害の公判で被告人質問に立った男性(56)は、自らが殺害した母親=当時(86)=への慈しみの言葉を繰り返していた。 「ハイハイで近づいてきた母を抱き上げると、強く抱きしめてくれる。そんな老いていく母がかわいくて」 傍聴席からは、すすり泣く声が聞こえた。裁判官の目も真っ赤だった。 男性が京都市伏見区の桂川河川敷で母親の首を絞めて殺したのは18年2月1日未明。自分も首を切って自殺を図ったが、死にきれなかった。 男性は、父親が死亡した平成7年からアパートで認知症の母親と2人暮らしだった。母親の認知症が進んだ平成17年4月ごろから、深夜に起き出す母を世話する昼夜逆転の生活をしていた。当初はデイサービスを利用していたが、自分の手で母の介護をしようと退職。介護と仕事を両立できる職を探したがなかなか見つからなかった。 職人だった父の教えを守り、「他人