木皿泉という人の「昨夜(ゆうべ)のカレー、明日のパン」という小説を読んだ。 娘と行った図書館で、娘が本を探しているあいだ、借りるつもりもないのに手に取ったこの本の冒頭に出てくる女のあだ名が「ムムム」というのにひかれて、なんとなく借りた。 「ムムム」というのは、笑えなくなった女にお隣さんがつけたあだ名で、『機嫌が悪いのなら「ムッ」とした顔をすればいいのに、それを隠そうとするものだから、怒ったような困ったような眉をひそめたムムムという顔』になるから。 なんてことない小説だった。というと失礼だし、話も終わってしまうのだけど、なんてことない小説は、好きだ。 映画とかもそうだけど、小説も、割と冒頭のあたりで(たぶん自分にとって)おもしろいかどうかの判断がつく。言葉にするなら「辻褄があってる」というような。 地面があるから、足でその地面を踏みしめて立つことができる、そんなような当たり前のこと、そういう