先日、記事の中で『ソフィーの世界』を提案したけれど、個人的に、まおゆうの読者に強く手に取ることをお勧めしたい本のもう一冊、『薔薇の名前』を紹介しておきたい。イタリアの記号論者、ウンベルト・エーコ博士の記した、前世紀を代表することになろう傑作の一冊である。 13世紀イタリア北部山岳地帯、アルプスを背後に控えた山深い修道院で起こった連続殺人事件。折しも異端裁判の舞台となろうとしていた修道院側からの依頼により、見習い修道士である主人公は、師ウィリアム修道士に従って、その真相に迫っていくのだが・・・。 中々に難解な本ではある。特に序盤のイミフさは一般の読者をうんざりさせるには十分な力を持つのだけれど、騙されたと思って前巻を半分まで読み進めて、むしろ読み飛ばしてみてほしい。『ひぐらし』的な加速度を持って、物語はすぐ、その真の姿を見せてくれる。 以下は、作中のさる修道士の語る台詞の抜粋である。彼の語る