「あの、何か演奏しましょうって言っても、僕、二、三曲しか吹けないんです。クラプトンなんかどうですか?」「いいね」 お父さんがようやく言った。「素敵ね」 お母さんも言った。「じゃあ」「ティアーズ・イン・ヘブン?」 千波ちゃんが言った。そのとおり。僕はその曲しか吹けない。千波ちゃんが時々自然に口ずさむ曲。それを練習した。 瀬尾まいこ「やさしい音楽」 別れの際で、ウウウ〜とかのんびり唄ってる場合じゃないような気がする。でも歌ってのはそういう余裕を必要とするものなんだ…違う。必死のときでも、いや必死だからこそ、唄って伝えたくなるときがあるんだろう。ティアーズインヘヴンを唄うクラプトンだって、もうホント、唄うしかないんだろう。 舞城王太郎「川を泳いで渡る蛇」 エリック・クラプトンの「ティアーズ・イン・ヘヴン」がどのような内容を持っているのか、ことによると説明する必要はないかもしれない。もちろん