弟が結婚詐欺にあった女の人はよく遅刻をする人であった もう10年くらい前の話だがそういうことも夢の中の出来事のようだ デスクの透明のマットの下に犬の写真を入れていた 「飼い犬ですか?」と訊くと「ちがう」という 隣町から橋を渡ってくるのである 「橋が混むのだ」 といつも言っていた 私は当時の職場は家から車で5分のところにありあまり遅刻を咎めると「近いから遅刻しないで済むんだ」 と言われそうだから黙っていた 彼女の方が年上なのである 以前はT建設にいてそこではよく労災事故があったそうだ 私は下に見られていたのだ しかし彼女は仕事ができなかったので私はあまり引け目を持たずに済んだ そんな彼女が渡った橋を今は毎朝逆向きに通っている 橋の名前を見ると彼女を思い出す いつも口述でしか聞かないからどんな漢字なのだろうと思いを巡らせたら割と簡単な字だった