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ブックマーク / www.za.ztv.ne.jp (1)

  • 『字のないはがき』

    字のないはがき               向田邦子 死んだ父は筆まめな人であった。 私が女学校一年で初めて親元を離れたときも、三日にあげず手紙をよこした。当時保険会社の支店長をしていたが、一点一画もおろそかにしない大ぶりの筆で、 「向田邦子殿」 と書かれた表書きを初めて見たときは、ひどくびっくりした。父が娘あての手紙に「殿」を使うのは当然なのだが、つい四、五日前まで、 「おい、邦子!」 と呼び捨てにされ、「ばかやろう!」の罵声やげんこつは日常のことであったから、突然の変わりように、こそばゆいような晴れがましいような気分になったのであろう。 文面も、折り目正しい時候のあいさつに始まり、新しい東京の社宅の間取りから、庭の植木の種類まで書いてあった。文中、私を貴女とよび、 「貴女の学力では難しい漢字もあるが、勉強になるからまめに字引を引くように。」 という訓戒も添えられていた。 ふんどし一つで

    hamyam
    hamyam 2010/07/08
    向田邦子
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