数年前のあの日は、雨が降っていた。 雨音を聞きながら私は、荷造りをしていた。昨夜から寝ていなかったのに、全く睡魔は訪れなかった。 家賃の滞納に業を煮やした大家が実家に電話を入れた。家賃の滞納どころではなかった。借金が膨らみもうどうしようもなくなっていた。 大家と親からの電話を受けた時、私は恋人ではない家庭のある男とホテルにいた。私は電話を切り自分の愚かさが引き起こした事態の発覚に号泣した。恋人ではない男は泣く私を抱きしめ、「僕は何もしてあげられない、ごめんね、ごめんね」と言った。男はそのまま私の上に乗りいつものように挿入した。 同情しながら欲情し、自分の上で腰を動かす男を私は泣きながらも冷めた目で見ていた。男の欲望の正体は、こんなものかと、思った。 「すぐに帰ってきなさい」と親に言われ、私は男と別れ家に戻り荷造りを始めた。雨が降っていた。雨の中、何度もごみ袋を持ってゴミ捨て場まで往復した。