村上春樹原作の小説を、ベトナム系フランス人のトラン・アン・ユン監督が映画化。村上春樹の長編小説は、おそらく映画化がもっともむずかしい部類の原作ですが、そのことにはいくつかの理由があるとおもわれます。そしていまから、なぜ村上春樹の小説は映画化がむずかしいかについて考えてみようとおもいます。原作を繰りかえし読んでしまっていて、どうしても原作との比較になってしまい、映画を見るために必要な「原作から切り離した個別の作品としてとらえる作業」がうまくできなかったため、映画そのものの感想につなげられないかもしれません。また長編小説を133分におさめることの困難もあるとおもわれ、重要とおもわれる3つのポイントについても自分なりに推測してみました。 1、声にするとリアリティがなくなる 今作でもっとも印象的なのは、登場人物たちの会話です。映画は、原作のせりふをほとんど変えずに使用する手法で撮られており、このこ