もともと、自分のなかで「男性が女性の苦境を語ることの困難」という問題意識がありました。 女性が、セックス(性)とジェンダー(社会的役割)の両面において被抑圧的な状況にあることは疑いようがない。そしてそれは、個々人のおかれた環境により無数に細分化され、それぞれが簡単には表現できないものとなっている。 そのように複雑な事情をふまえたときに、異性である自分が安易に女性の問題を語ることは、「よく理解していないままに、恣意的にわかりやすい言葉を語ってしまう」という意味で、とても良くないことであるように感じていました。どのような問題であっても、非常に複雑なことを十把一絡げに表象として表現する、という行為はとても乱暴であるといわざるをえません(全面的な肯定や批判に陥りやすい)。