昨夜ひとりで寝ている時、ふいに妻に会いたくなった。 娘恋しいの次は妻恋しいか、と我ながらに呆れてしまうのだが、こればかりは自分でもどうする事もできない。 私は暗闇の中でおもむろにiPhoneをまさぐり、音楽を再生した。「手嶌葵」のアルバムだ。彼女の曲を聴いていると、まだ娘が生まれてくる前の妻とのふたりの思い出が蘇ってくる。 妻の誕生日に「手嶌葵」のコンサートを観に行った。どちらかが特別にファンだったというわけではないのだが、私も妻も彼女の音楽にはどこか心惹かれるものを感じていた。 ちょうど誕生日に大阪公演があったからという理由で、私たちはコンサートに足を運んだ。しかし思い返してみれば、ふたりで誰かのコンサートを観に行くのは、そのときがはじめてのことだった。 彼女の声から発せられるマイナスイオン。心を撫でる癒やしのメロディ。知らない楽曲であっても関係ない。どの曲でも優しく暖かい音楽が私たちを